「失敗した」というご相談で、実際に見えてくること
「オールオン4®(All-on-4®)インプラントは失敗する」「危険だ」という声を耳にすることがあります。4本の柱で支えるので、1本がだめになると残り3本では持たず、あっという間に崩れる、というものです。実際に「治療を受けたのにだめだった」というご相談は当院にも寄せられています。
ところが拝見すると、確かにインプラントは4本入っているのですが、本来の設計とはまったく違うものであることが少なくありません。埋める場所が違う、長さが短すぎたり長すぎたりする、本数や配置が不十分、といった状態です。
この治療法を世界で初めて開発したのは、ポルトガルのDr.パウロ・マロです。どのような条件の患者さんに、どの位置・長さ・配置で行えば成功するかが明確に示されています。当院の院長は、ポルトガルのマロクリニック本部でDr.パウロ・マロから直接指導を受けた日本人歯科医師の一人です。
通常のインプラントと、お手入れの仕方も違います
通常のインプラントは骨に対してまっすぐ入っており、見えている歯の真下を掃除すれば済みます。しかしオールオン4®(All-on-4®)インプラントは奥側のインプラントをあえて傾けて配置しているため、お手入れの仕方も異なります。転居などで通院先を変える場合も、本来の設計を理解している歯科医師でなければ適切なメンテナンスは難しいのです。
当院で行うオールオン4®(All-on-4®)インプラントの考え方
「土台」を平らに整える
上あごの治療では、口元だけでなく頭蓋骨を基準に正しい位置かどうかを見ます。4本脚の机をイメージしてください。正方形なら安定しますが、細長いテーブルは脚の間隔が偏るためひずみやすくなります。
また、でこぼこの土地にまっすぐな家は建ちません。Dr.パウロ・マロは、骨の形が平らであることが非常に重要だと述べています。つまり、インプラントを埋める部位だけでなく、インプラントとインプラントの間の骨も整える必要があります。「歯ぐきを切らない」「骨を触らない」で済む症例は、実際には1割程度しかありません。
見えなくなる「梁」の部分が重要
家は柱だけでは倒れます。柱と柱を梁でつなぎ、その上に壁を貼るので、完成後は梁が見えなくなります。オールオン4®(All-on-4®)インプラントも同じで、人工の歯の内側にある金属の構造体がどれだけ頑丈かが、耐久性を左右します。この部分の金属を減らせば費用は下がりますが、強度は落ちます。適切かどうかはレントゲンを撮らないと分からず、最終的な歯が入ってからでは判断しにくいのが現実です。
上下の位置関係
下あごの歯は、上あごの歯と噛み合う位置に並べます。当たり前のようですが、上の歯の位置が頭蓋骨に対してずれていると、あごを傾けたり揺すったりしなければ噛めない状態になり、1本の柱に無理な力がかかって壊れてしまいます。
治療後に必要なこと
メンテナンスの費用も見込んでおく
車に「買うときの費用」と「将来かかる費用」があるように、インプラントも治療費だけでなくメンテナンスの費用が必要です。タイヤがすり減れば交換が必要なように、人工の歯も使ううちにすり減り、形が変わっていきます。
「あえて壊れやすい部分」を定期的に交換する
Dr.パウロ・マロは10年以上経過した患者さんを多数お持ちで、当院でも10年を超えた患者さんが何人もいらっしゃいます。長く安定している理由のひとつは、インプラントと骨を守るために、無理な力がかかると先に壊れたり緩んだりする部分を、あえて設けているからです。車のバネが衝撃を吸収するのと同じで、「遊び」が必要なのです。
その部分は消耗品と考え、定期的に交換します。ジェット機のエンジンが小さな傷でも部品を交換するのと同じで、1か所の不具合を放置すると連鎖して壊れていきます。「残り3本が丈夫だからまだ大丈夫」「様子を見よう」ということはありません。
正しい噛み方を練習する
インプラントは上下方向の力には強い一方、横揺れの力にはとても弱い構造です。長年の噛み癖で片側ばかりで噛んでいると、将来の破壊の原因になります。両方で、正しい位置で噛むことを、練習していただく必要があります。
もたれかかる椅子に座り、テレビを見ながら横向きで食事をすると、横揺れの力がかかります。砂の山に棒が刺さっている状態を想像してください。上からの力には耐えても、横に揺すられると周りの骨は崩れていきます。
ご自身の歯を失ったのは、もともとの歯の使い方に問題があったからかもしれません。インプラントだから壊れない、ということはありません。正しい道具の使い方を知り、練習していただくことが、この治療を長持ちさせるいちばんの近道です。ナイトガード(マウスピース)の使用や、毎日の清掃も欠かせません。